山茶花

こちらはボーイズラブ漫画の二次創作SSとなります。
関心ない方、お子様は閲覧なさらぬようお願い申し上げます。

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恐れ多くも先日、「美しいこと」前楽の観劇をご一緒させて頂き、念願のお目もじが叶いました、BLレビューの神ブログ(現在はそちらの一つは小休止で‘かちゅらぎ様’に夢中でいらっしゃる)をいくつもお持ちの、かちゅ♪さまからのご注文。
(当日の「今半すき焼き萌え語りオフ」の模様はまた改めて後日レポります笑)


日高ショーコ先生作品 「憂鬱な朝」 久世暁人×桂木智之で。

三巻の表紙&扉絵、山茶花の花をバックにした切ない二人を見て思わず妄想、日高先生の表紙のお約束&お楽しみ!花言葉を踏まえての物語に仕立ててみました。

初めて抱き合った日からまだ日の浅い
二人の冬の朝のお話を。


では、こちらから
     ↓






◇ ◇ ◇




大人の背丈をも軽々と超える、七尺はあろうかと思われる大木に、儚く白い花が咲いている。

冬枯れの中、凛として美しく、何者にも媚びずに一人静かに咲くその姿。

僕はいつしかそれを、ある男に重ねていることに気が付いた。

自分にとって、この世のすべてに値するほどの男。


恋焦がれ、いっそ気が触れてしまえたらどんなに楽だろうとさえ思う。


そして、自分のしている事が、堪らなく恐ろしくなる。

酷く痛みを与え、すべてを奪い尽くすまで、決して離さない。
甘い口づけを欲しがりながらも、身体はいつも別の所業を繰り返すのだ。


それ程に、爪の先、いや頭髪の一筋までもがたまらなく愛おしい。


桂木…桂木智之。


そう声に出そうとして不意に、その下の名までを口にすることは、自分に許されぬ事だと気づく。

呼び名すら自由に選ぶことのない、つまらぬこの身の上に。



果たして「心」など、持つ意味はあるのだろうか…




- - - - - - - - -





「ハァっ…あっ、あっ、ああっ…」


「んんっ、…ん、もっと、もっとだ…桂木…お前だって、まだこんなに…」

「いいえ、もう…夜が明ける…女中達の起き出す前には部屋に戻らなくてはなりませ…ん、んあっ…どうか、もうお離しください」

「桂木、許さないと言ったはずだ、お前のココから一滴残らず搾り取ってしまうまで何度だって僕は…僕はっ!」


……。


ピチャピチャと濡れた音を立て、夢中で彼の性器を貪る僕に、静かな低い声が落ちる。



「お聞き分け下さらないのなら、もう二度とお部屋には参りませんが、それでよろしいのでしょうか、旦那様…」



さっきまでの熱い息は一体何処へ消えたのだろう。

一瞬にして、凍り付くような冷たい声が心臓へと突き刺さる。

僕は虚しさを堪え、男の身体から手を離すしかなかった。

こうなったらもう、何度吸い上げたとしても、男のモノはピクリともしないはずだから。



ただ一言、伝えたい言葉があるだけなのに。

ただ一つの、呼びたい名があるだけなのに。


何事もなかったように、淡々とシャツを羽織る背中をただ呆然と眺める僕の心には、いつだって冷たい雪が降りしきる。






- - - - - - -





鎌倉の家の庭にあったのは、まだ若い木だったけれど。
ここ(邸宅)に来てすぐ、裏庭に咲く花を見て、子供心にもすぐにわかった。


これは母さまのお好きだった、あの白いさざんかの花…

赤い花を付ける木は、下々の市中の庭によく見るという理由であまり好まれなかったが、茶席にも多用される程の気品漂うこの白山茶花は特別だった。

病弱な母の唯一の楽しみとして、冬の間はほぼ毎日のように一枝手折られ、奥の茶室に、またいつも居る座敷の飾り棚にと、そっと活けられたものだ。


「綺麗でしょ…」

「はい、母さま」

「貴方も大人になったらお父様のように、子爵家の当主として真の孤独に耐えねばなりません」

「んっ、ボクお父様みたいになるんだね!」

「ええ、そしてこの花のように人知れず、困難に打ち勝ち、ひたむきに生きるのです…」


母の言葉は幼い僕には何のことかも解らなかったが「孤独」と言うその言葉の響きだけが、何故だか耳に残ったのを覚えている。


「母さま、あの、こどくって…なあに?」

「そうね…今日のように静かに雪が降る朝に、お庭に立っているようなものですよ」

「ふうん…父さまも、いつもお庭に立っていらっしゃるの?」

「ええ、そう、心の中では、ね」


遠い日の母の記憶を、鮮明に思い出したのは、今朝の冷たい粉雪のせいだけだろうか?



桂木が出て行ってしまった部屋は、夜明けの雪より寒い気がして。
僕はガウン一枚で、テラスから庭へと降りたのだった。

雪の降りしきる中、白い山茶花の花はひっそりと咲いている。

流れる雪の白に隠れて、クリーム色の花びらは、静かな孤独に耐えていた。

誰に見つけられなくてもいい。
ただ確かにそこに立っていたいのだ、と。


使用人達が起き出して、慌てて僕を捜している様子が廊下の窓から見え隠れしている。


ふと見上げると、二階の角部屋のカーテンが揺れ、桂木がこちらを見下ろしているのがわかった。


夜中降り積もった雪に音が吸い込まれ、シンと静まり返った空気の中。


その時、僕はふと思いついたのだ。

今ならきっと、彼には聞こえないだろう。


男が「ん?」と一瞬小首を傾げ、いぶかしげにまた僕を見たその時。


小さな声で、でもハッキリと、僕はずっと言えないでいた大事な言葉を音にした。




…ともゆき、あいしている…




fin.
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by apacheoffice | 2011-07-21 23:29 | 他作家様作品での創作 | Comments(2)
Commented by かちゅ♪ at 2011-07-22 00:06 x
あぱっしゅさま、こんばんは~。

UPのお知らせをいただいて、早速駆けつけて拝読させていただきました。わおわお♪すばらしい~~!
さすがSSの神さま、匂い立つような気品漂うSSに、かちゅ♪言葉がありません・・・!静謐な美しさを感じました。

そして微エロでありながら、なんという色っぽさ…。
妖艶な桂木にドキドキしちゃいました。

日高先生のカラー絵の山茶花のイメージをさりげなく取り入れてるのもすばらしいです。

SSってこういうふうに書くのね、ということを教えていただいた気がします。まだまだ修行中の身(笑)ですが、あぱっしゅさまのように格調高いSSが書けるように日々精進したいと思います。(えろ魔人すぎる自分…汗)

コピペして、持って帰りたい(どこへ?笑)くらい素敵なSSをありがとうございました!
!毎日このページに通って^^何度も涎をこぼします。。。

お忙しいと思いますが、またお時間の許すときにでも、この作品のSSを書いてください。お待ちしてます~~♪

Commented by apacheoffice at 2011-07-22 00:37
かちゅ♪さま

身に余るお褒めのお言葉。<あ今、男場って打っちゃった汗

スミマセン、なんだか今日読んで今日書いちゃったんで、読み込みが足りないかもですが、でも何度も読んだんです!ええもう萌えまくりました!

素敵な作品を教えて下さってありがとうございました。
いや、読んでたんですよ二巻までは。
で、三巻をかちゅ♪さまからプレゼントして頂いて、あの山茶花の花のカラー絵を見た瞬間に、ブワッと込み上げる何かが襲って…萌のミラクルワンダーが!

なんだか、こんなもんでお許し頂くのは申し訳ないような気持ちですが、これでよければ何処にでもどうぞお持ちになってくださいませ。

夜遅くまでお付き合いくださってありがとうございました。
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