Green Jade Story (4)

こちらはボーイズラブ小説の二次創作となります。
関心ない方、お子様は閲覧なさらぬようお願い申し上げます。

Green Jade Story の四回目。
(YEBISUセレブリティーズ アルベルト×ユキ)

なかなか船に乗せられないから、サッパリ事件も起きず(笑)や、むしろそれが目的?!しばらくはコレで、の~んびり遊ぶ予定です。<相当イヤな予定だな

それでは、長くても大丈夫な方こちらから
   



◇ ◆ ◇






そう、もっと…僕に、くっついて…」

アルベルトの右手が背中に回り、左手は腰骨のあたりに優しく添えられている。

初めて経験する体勢に思わず腰が引け、みっともなく身体がくの字に歪んでしまうのを自分ではどうすることもできなかった。

しかもその様子は背けた目の先、芝生の庭へと続く大きな窓ガラスに映って、後ろ姿まで彼には丸見えだ。

「足を肩幅に開いてそう…ゆっくり、上手だね、本当にスルのは初めて?」

くすぐられているような、甘やかされているような。
いつもの口調でからかわれても、もうこれ以上はとても上手く出来そうにない。

「はい、あの…でも私にはやはり無理なのではないでしょうか…今夜はもう、許してくださ…」

「ユキ、そんなことを言ったらまるで僕が虐めているみたいだよ…君が少しは楽しいと思ってくれるまで、もう少しの辛抱だ」

アルベルトが唇の端を上げてクスリ、と笑った。

確かに虐められるのには慣れているが…

二人は今、誓って恥ずかしいことをしているわけでも、ましてやベッドの上にいるわけでもない。

場所は自宅のリビング、ユキは今、アルベルトからのダンスの特別レッスンを受けているのだ。




- - - - - -



明日の朝には二人して香港へ旅立つ、その前夜。

夕方、アルベルトとほぼ同時刻にユキも仕事を終えて帰宅、冷蔵庫の片付けを兼ねて作った軽い夜食の「野菜とチーズのリゾット」は意外に好評で、思いがけずワインが進んでしまった。

旅への期待と高揚感、仕事に追われギリギリまで終わらなかった荷物のパッキングの疲れもあってか、いつもより少し早く酔いが回ったようだ。

すると突然、アルベルトが立ち上がり、「さぁ、これからダンスのレッスンをしよう」と、無茶なことを言い出して…

(こ、これは、困った…)

ほろ酔い気分のまま手を引かれ、ソファーから立ち上がって暖炉の前まで移動したのは良いが、ダンスなど生まれてこの方ほぼ未体験に等しい。

どちらかと言うと運動が苦手な自分にとって、単純な足の動きさえ至難の業。
アルベルトの足を見よう見まねでやってはみたものの、よく聞く所の雲の上を滑るように、といった域にはどうやっても及びもつかない酷い有様だった。

「ユキ、もっと大きく踏み出してごらん!大丈夫、うちのリビングはこんなに広い」

幸か不幸か、愛犬のスマイルは昨夜から旅の間をお願いするボスの家へと預けてしまったので、暖炉前には彼が寝そべる定位置がぽっかりと広く空いている。

そっと腰を引き寄せられたユキは、見上げたアルベルトの真剣な表情に驚き、慌てて息を呑んだ。

「聞いてくれユキ、これは大事なレッスンだ、もちろん僕のワガママだってことはよく分かっている…君には迷惑な話かもしれないけれど…」

彼曰く、たとえ短くとも「船旅」には(ましてやフォーマルな結婚披露のパーティーには)ソシアル・ダンスは必要不可欠、一番の重要アイテムだと言うことらしい

天井の隅に据え付けられたスピーカーから静かに流れるリズム。
褒め上手な男の腕にふわりと抱かれ、うまい具合にリードされていると、今教わったばかりの簡単なステップを辿るだけで、どんどんと進歩している気になるのはどうしてだろう。


(…案外、やってみれば簡単、なのかも…)


すると、実際はほぼ足踏みに近い、といった程度のユキが、思わずステップを間違え、アルベルトの足をグイ、と踏みつけてしまった。

「ああっ、す、すみませんっ!」

「ユキ、謝らなくてもいいよ、君は背がある割に華奢だから少しくらい踏まれても痛くもなんともない」

「本当に申し訳ございませんでした…それであの、失礼のついでに伺いたいのですが」と、恐縮しつつもユキが先ほどからの小さな疑問を口にする。

「あの、貴方はパーティーでたくさんの淑女のお相手なさるのはわかりますが…そもそも私のような不調法ものにソシアルダンスなど果たして必要なのでしょうか?」

片眉を上げ、どうして?と言った表情で、ダンスを続けるアルベルトが頬を合わせたままユキに答えた。

「MARIの結婚式には世界中から招待客が集まってくるだろう、そこで僕は君を、堂々とエスコートしたいんだ…新郎の映画監督、彼の回りの華やかなハリウッドスター達も大勢来るだろうし、芸術関係やセレブの中にはゲイの人間も多い、僕達が特別だなんて思う必要はないんだ、人目も気にせず、ダンスはもちろんキスも、ずっと肩を抱いていることだって可能だよ、そう愛し合う者同士、すべては自然で当たり前のことだからね、そんなことをいちいち誰も驚きはしない」

人前でキスも当たり前って…それは一体、どういうことなのだろうか…

想像も付かない、セレブのパーティーに軽く目眩を感じたユキが、アルベルトの肩に顎を載せ小さく溜息をついた。


「いいからもう一度、振れる重心に逆らわず、反動を利用して向こうに送り出すからやってみてくれ…君はすんなりと流れに乗って自然に体を回転させればいい、多少の間違いは気にしなくていいよ、それより僕の大好きなこの綺麗な背中を伸ばして、ね」

そう囁いたアルベルトが優雅に腕を延ばすと、ユキの身体が自然に押し出され、二人の間に空間が生まれる。
そしてまた引き寄せられ、まるで波と戯れているような、ダンスに美しい流れが出来上がるのが解った。

「あ、あの、こ、こんな感じでしょうか」

「ん~いいね、コツを掴めた?さぁ次は音楽に乗って踊ってみよう」

その瞬間、デジャヴのごとく、ユキが不意に遠い記憶を蘇らせる。


…そういえば、子供の頃、屋敷の洋間で古いレコードを掛けて、こんな風に抱き合って踊る両親を見るのが好きだった…


今思うと、華やかな政財界のパーティーなどでの付き合いは、愚直なまでに真面目な中流家庭出身の父にとって、さぞかし苦痛だったに違いない。

父に抱かれ踊る母の、折れそうなほど細く女性らしいウエスト。

身分違いの、大恋愛の果てに結ばれたと言う両親。
愛する夫をさりげなく助け、社交の華としての役割をきちんと果たしていた子爵家出身の美しい母の姿を、たとえ今まで何があったとしても、ユキは決して忘れることはなかった。

白い靄に包まれた記憶。

母の足を踏み、慌ててて頭を下げて謝る父が可笑しくて、子供の頃の僕は長椅子の上で声を上げてキャッキャと笑っている。

今思えば、自分の不器用さ、真面目で要領の悪い所は、間違いなく、父譲りなのに違いない。
そうだ、あれも丁度、屋敷の洋間、同じような広い暖炉のある部屋で…


ぼんやりとした思いからふと気づくと、ちょうどアルベルトがステレオの音量をリモコンで調整し、新たにスタンスをキメて拍子を数えている所だった。

「そう、大きく円を描くように、パートナーの僕に身体を任せて進行方向へ向かって肩を少し落とすんだ…」

記憶の中の母を真似、大きく身体を回転させると、アルベルトが驚き、手を叩いて賞賛の声を上げた。

「そうだよユキ!まさかどこかで習っていたのかい?君のスレンダーな身体は立っているだけでも美しいけれど、こうしてしなやかなラインを描いて優雅に踊ったら、柔らかさが加わり魅力が何倍にもなる…」

「そんな大げさなことを言わないで下さい、子供の頃の…いいえもっと小さい幼児の頃の一番古い記憶を思い出したのです。父と母が屋敷で、こんな風に微笑み合ってダンスの練習をしていた時のことを…」

「そうか、さっきの素晴らしいステップは、お母様のそれを思い出してのことだったんだね。君のご両親はさぞかし仲がよくて、素晴らしいカップルだったに違いない…僕達もうんと見習わなくちゃ、ね?」

「はい…」


こんな一言で、優しい気持ちが満たされる。
アルベルトの言葉は魔法のようだ。

急にユキの目の前が霞み、温かい何かが頬を伝う。
アルベルト無しではもう生きて行けない、もし彼を失ったら、自分はきっとどうにかなってしまうだろう。

思いが深すぎて、それは時に行き場を失うほど…

それを見てアルベルトが涙を人差し指で掬うように拭って言った。


「愛する人を思い出すのは素晴らしいことだ、僕には生まれる前に亡くなった父親の記憶は全く無いからね」

「私にとっての父の思い出は…そんなに良いものだけではありません…」

「あぁ、でも亡くなった人のことは、辛いことも、良いことも、すべてはその人と自分を繋ぐ大事な糸なんだ」


僕は君が…羨ましいよ。


そう言ってアルベルトが耳元に唇を付け、小さく囁いた。


「ねぇ…もし僕になにかあったら…君は泣いてくれる?」


え?


自分達を包む空気がシュ、っと一度に動いたような。

愛する人の囁き一つで、一瞬にして胸に息が出来ない程の苦しみと不安が押し寄せてくる。

甘い恋の幸せ、その隣には、ちゃんと切なさと恐ろしさが待っていて。
どっちも大事な恋の半分なのだ。


「っ、あ、アルベルト!なんてことを…たとえ話だとしてもイヤ!そんなこと、考えるのも…」


酷い、あんまりです、と腕を振り払って一目散にベッドルームへと逃げ出すユキを、アルベルトが慌てて追いかけた。


階段を一段抜かしで駆け上がり寝室のドアを開けると、ベッドの上に寝転ぶユキの、こんな時にも真っ直ぐに伸びた綺麗な背中が見えている。


「待ってくれユキ!バカなことを言ってすまない、君があんまり可愛くて、ご両親にまで嫉妬してしまったよ…君のママに申し訳ないことをした…許して欲しい、愛してる…」

吸い寄せられるように背中に触れて、手のひらで体温を送り込むように撫で上げると、ユキの冷えた背中がヒクッと撓んだ。


「そんなコトを言ってもダメです…きょ、今日はもう…しませんからっ」

「しないって、何を?君、まさか?!」


え?

アルベルトが隣に身を滑らせて潜り込み、体中を撫で回す頃にはすでにお互いの体温は上昇している。

「フフっ…」

「アルベルト、な、何が可笑しいんですかっ……っ、」

アルベルトが、君は可愛いねと笑いながら、オフホワイトの毛布を引き寄せ、背中から抱き締めて来た。

「ねぇ、気がついてる?今、君がものすごく、セクシーな発言をしてくれたこと」

「そ、そんなこと知りません!ダ、ダンスの練習はもうしないと言ったんですっ!明日の出発は早朝ですよ、せっかく旅の支度が整っているのに、飛行機に乗り遅れては大変ですから…私はお先に、休ませて頂きますっ!」

どんな時も前向きで明るい典型的なイタリア人である恋人は、こうしてわざとからかって、すぐ自分を煙に巻くようなことばかり言うから困ってしまう…

こちらの言葉尻を取り、うまく拾ってくすぐって、いつの間にかこちらの機嫌をすっかり直して…

うやむやにされる悔しさよりも、温かな気持ちが嬉しい。

何をされても、何を言われても怒れない。
やっぱり、貴方は太陽のような人。

今夜も激しく抱かれるのだろうか…と、ユキが内心諦めかけた頃。

抵抗するユキをすっぽりと腕の中に納めてしまうと、どうやらそれで満足したらしいアルベルトがチュ…ん、チュ、と頬に、その熱を沈めるような優しいキスの雨を降らせた。


「わかった、いいよ、このまま抱き合って眠ろう…何もせずゆっくり休ませてあげられるのも、たぶん今夜が最後だろうから」


軽く合わせたままの唇が「オヤスミ」と、小さく動き、同時に寝室のライトが静かに消えた。





続く
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by apacheoffice | 2011-03-04 23:23 | Green Jade Story(未完) | Comments(8)
Commented at 2011-03-05 13:49 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by uduki at 2011-03-05 14:18 x
アルベルトとユキのダンスレッスン、可愛くて切なくていいですね~
堪能させていただきました!

前話のアルベルトと加賀美の会話、「北風と太陽」のコメント欄にリンクを張らせていただきました。
あ、それから一瞬間違えて、こちらの話とリンクしてしまった時間があります。
訂正しましたが、そっちで訪問された方があるかもしれません。
ご容赦くださいませ。
Commented by apacheoffice at 2011-03-05 15:57
2011-03-05 13:49 の非公開さま

そうですか、そんなに嬉しいと仰って頂ける私は世界一幸せな女です。ペースがまちまちで連続upになったり、半年近く開いてしまったりと、楽しみにして下さってる方にはこれほどご迷惑はないかと恐縮しております。

これからはもう少しスピードupしたいと思っていますので、どうぞまたお越しくださいね。(^o^)

それから、ご案内くださったところを早速拝見しました!
非公開さまの深い考察、楽しく嬉しく読ませて頂きました。
どうかまた書いてください!
(私もソレ気づいてませんでした、ありがとうございました~)
Commented by apacheoffice at 2011-03-05 16:01
udukiさま~!

何と、このようなとんでもないモンにありがたくもリンクまで!
申し訳なくて身がモジモジしちゃいますっ!
ご案内でいらした方に少しでも笑って頂けますよう、udukiファンとして恥ずかしくないよう、これからも精進してまいります!

そして春、一条さんの「春の陣2011」でお逢いできますこと、心から楽しみで楽しみで、逢瀬が待ち遠しいです。
ありがとうございました。
Commented by green-island33 at 2011-03-08 21:28
>「足を肩幅に開いてそう…ゆっくり、上手だね、本当にスルのは初めて?」

白光錦かと思いました。(爆)
ああ、知識がムダに先走り~w

ダンスか・・・いや、私もアルにダンス習いたいわ!
ユキ、ほんっと可愛いわ!きっと顔真っ赤なんだなw
次回は本番ですか?今度こそ知識が役に!(爆)
楽しみにしています~♪

Commented by apacheoffice at 2011-03-08 23:41
mokaちゃん

白光錦キタ~~~~~!
早速の貴重な知識、48手<BLフォーティーエイト
素晴らしいっ、もう絵が浮かばない自分が歯がゆい、乗り遅れてる~。(>_<)

その先走り、大事です。<またどこかで使って頂きたいです

ダンス、レッスンってどうしてエロ基本なんでしょうか。
密着してるし、意識が集中してるし、音楽あるし、ええ環境!
旅先でもたっぷり踊って、密着してもらいます。
<けしてシ○パンシリーズではありません
Commented by at 2018-04-30 04:56 x
お話の続きは、今も書かれているのでしょうか…?
是非読んでみたいです!
Commented by apacheoffice at 2018-05-10 10:14
凪さん、コメントありがとうございます。\(^^)/
お返事遅くなり大変失礼致しました。
お言葉有り難く泣けてきます。
時間が急に無くなる生活に入ったこともあり、数年置きっぱなしておりまして申し訳ありません。

ようやく今年、すこーし余裕ができつつあります。
「ラストはもう決まっている」と、未完長編◯◯◯の仮面のみうち先生もニコニコ仰っておいでですので、私もそう言わせてくださ…(^^;

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