The Place To Be (8)

こちらはボーイズラブ小説の二次創作です。関心ない方、お子様は閲覧なさらぬようご注意下さい。
ようやく最終回となります。18禁、しかも相当長文ですので、携帯からでは途中で途切れてしまう機種もどうやらあるらしいです。<大汗

申し訳ありませんがその場合は別途お送りしますのでメールにて。
(18歳以上であることを明記した一文を添えてお申し込み下さい)

YEBISUセレブリティーズ アルベルト×ユキの8回目(最終回)

長い話にお付き合いくださって、本当にありがとうございました。
ではこちらから
   



◇ ◆ ◇



「僕を欲しがって震えている…君を、見せてくれ…」


そう言って、こちらを見つめるアルベルトの瞳は見たこともない強い光を湛えている。
それが唯一無二の存在、アルベルトの望みであるのなら、従う以外に道はなかった。

ギュっと強く目を閉じて。
両手をそろそろと脇に下ろして。

すっかり勃ちあがってしまった自分のものを無防備に晒す羞恥に、ただただじっと耐えて俯く。



「ユキ、目を開けて…こっちを見てごらん」

暗闇に浮かぶ、無駄の無い筋肉質の身体。
全体のしなやかなラインと硬質なパーツが造り出す男性的な陰影に、思わずユキが目を見開いた。

アルベルトが、茂みから腹に向かって雄々しく反り返る欲望を、わざと下から擦りあげて見せつける。


「あ、アルベルト…あの…」
「目を逸らさないで、君をこんなに求めてる僕のことも見て欲しいんだ」

小さな炎に照らされているのは、自分だけではない。
開放的と言われているイタリア人であっても、こうして人前に裸体を晒すのは、とても恥ずかしい事に違いないのだ。
その証拠にアルベルトの瞳は、さっきから何度も虚ろに瞬きを重ねている。

「君を見て、感じてる僕はどう?」
「き、れい…です…とても、逞しくて…神々しいほど」
「君もすごく素敵だよ。欲情している君自身はとても美しい、色も形も」

闇と炎を間に挟んで見つめ合うことが、なんと美しく淫らな行為であることか。
熱に浮かされたように、ただぼんやりとアルベルトの声に頷いている自分に驚く。

「貴方を見ているだけで、こんなふうにになってしまうなんて…私は…変です」
「どうして?男は目と耳で感じるんだ…君も健康な一人の男性なんだよ。ほらどんどん大きくなってきた…もっと擦って」

アルベルトのささやきに促され、ユキの右手は自分の熱いモノをそろそろと扱き、左手は身体中を彷徨い始める。
頬から耳、首すじを下って、さらに鎖骨の窪みを2本の指で辿ってゆくと、アルベルトの視線が痛いほど、その指先へと突き刺さった。

「君の感じやすい乳首が、可愛く尖ってるのがわかるよ…指で摘んで…もっと、強くしてごらん」
「あ…ん、っ…イヤ…アル…もう」
「ああ、すごく感じてるね、そんなにイイの?自分でするほうが感じる?」
「ち、違います…アル、あなたが…見ているから……」
「ほら右手がお留守になっているよ、君の綺麗なペニスもちゃんと扱いて、もっともっと気持ちよくなって…」

滴るような色気を放つ、アルベルトのバリトンヴォイス。
その艶声に導かれ、まるで魔法に掛かったように夢中で快楽に溺れる浅ましい自分。
逞しい恋人の身体を見つめ、行為を見せ合う恥ずかしさに感じて、あっと言う間に限界が近づいてしまいそうだった。

手のひらから漏れるジュッ、ジュッ、と言う粘着質な水音が、だんだんとリズムを早め、ダイレクトにユキの耳を犯してゆく。

「はぁっ、ああっ…もう、…アルベルト…あ…」
「もうダメ?イっちゃう?いいよ、このまま2人で見つめあって同時にイクのはどう?」

案外すんなりと終わりを許されたことには感謝をしたいけれど、その恥ずかしい提案に素直に頷くのは、さすがにためらわれた。

「っ、でも、とても…恥ずかしい…です」
「ユキ、一番綺麗な君をこの眼に焼付けたい…これから世界のどこに行こうと、今の君を思って夜を過ごすよ…ああもう僕の方が我慢が効かない、すぐにもイってしまいそうだ…」

ジュ、ジュッと、さらに激しく粘膜を擦る2つの音が重なり合い、湯船に起こる小さな波が、絶え間なく膝に打ち寄せた。

「アルっ、あ…ん…、もう、もうイク、いっちゃう…、あ…」
「ユキ…っ!そんな目をして…ダメだ、あぁっ!」







◇ ◆ ◇ ◆ ◇





ん…

ひんやりとしたミネラルウォーターが、窄めた唇からゆっくりと注ぎ込まれる。
冷たい水が喉を通る感触に、ようやく身体が生き返ったような心持ちになった。
アルベルトに支えられてようやく湯船から上がり、浴衣を羽織って部屋まで帰った所までは覚えていたが、夜具の上に倒れ込むように横になってからは少々意識が飛んでいたようだ。

口移しのキスの合間にも、アルベルトが心配そうに何度も髪を撫でてくる。
そろそろ返事をしなければ、本気で心配させてしまいそうだった。

「ユキ、大丈夫?」
「はい…もう大丈夫です、あの、お水を、ありがとうございました」

弱々しくはあるが、目を開けてしっかりと答えると、安心したようにアルベルトがにっこり微笑む。

「誰にも教えたくはないけれど…君の長くて細い鎖骨は、こうやって真上からキスをして眺めるのが一番美しい」

思いがけない台詞に、ドキッとさせられる。

「でも浴衣を着込んでしまうと、鎖骨を見るのもひと苦労だね、襟元を緩めるのにさっきから大変だったよ」


慌てて自身の胸元を見ると、無理やりに帯のあたりから襟を引き抜いて緩められたれた形跡があった。
気がつけば、彼自身も見よう見まねで、なんとか浴衣を身に着けている。

「アルベルト、浴衣を実際にお召しになるのは今夜が初めてですか?」
「ああ、ホテルに置いてあるのは見たことがあるけど、たいていバスローブしか使わないからね。実は布団に寝るのも初めてで、さすがに少し緊張している。帯はどう?これでいいのかな?」

一番大きいサイズでも若干丈が足りないのだろう。短い裾を気にしつつ、アルベルトが苦笑した。
しかし、元来胸板の厚いアルベルトの身体は逞しく、浴衣を緩やかに纏っているだけで、日本男子も及ばぬなかなかな男ぶりだ。

「いいえ、案外と言うか、とても良くお似合いです」
「そう?本当にそう思う?」
「ええ、とても素敵ですよ」

正直な気持ちを言葉にすると、目の前のアッシュブラウンの瞳が一層輝きを放ち、笑顔が蕩ける。
惚れ惚れと見つめているユキの肩を、アルベルトが両手でそっと引き寄せた。

「君もすごく似合っているよ。きっちり着ているときはあんなに隙がなく見えるのに、ほんの少し襟がはだけただけでこんなにエロティックに豹変するなんて…反則だ…」

顎を捉えた指が首すじを下り、鎖骨へと彷徨う。

「お風呂での君は堪らなく色っぽくて、どうしようかと思ったよ…一生、絶対に、あんな姿を僕以外の誰にも見せないで欲しいって頼んだら、君は笑うかい?」

ああ、どうしていつもそんなことを。
あんな恥ずかしい姿を、他の誰に見せるというのだろう。
貴方だけ、すべてはアルベルトだけのものなのに…

上手く応えられないもどかしさと、身体を走り始めた快感がない交ぜになって、ユキが切なく身悶える。

アルベルトがさらに浴衣を脱がそうと、帯の端を引っ張り苦戦し続けていたが、しっとりと湯気をはらんだ帯に阻まれ、なかなか上手くいかないようだ。

「んーー…こうか、いや違うな…」

ブツブツと口の中で呟きながらあれこれと試してはみても、結び目は一向に解ける気配もない。
そして、しばらくすると少々大げさにため息をつきながら肩を竦めて、アルベルトが降参のポーズをとった。

「ハァッ…参ったな、どうしたらこの堅い結び目が解けるのか判らない。僕は一晩中、この黒い帯と格闘しそうだよ」
「フフ、日本の着物は正面から脱がせようとしてもダメなんです」

え?

ユキの微笑みに、今度はアルベルトが瞠目させられる番だった。

「そのかわり、私の後ろから寄り添ってみて頂けますか」

こうかな、と後へ回ってぴったりと身体を添わせると、ユキがその手を取ってそっと彼を導いて驚かせた。

「なんてことだ…ちょっと後から抱きしめただけで、こんな…」

まるで、無防備じゃないか、とアルベルトが感嘆のため息をつく。

襟の合わせから、脇の下から、そして乱れた裾からも…思うままに侵入し、胸も、腰も、脚も、全てに触れることができる。

「凄いな…日本人の性愛に対する奥ゆかしさを、今思い知ったよ。見えそうで見えない、正面から正攻法で攻めても堕ちないのに、ちょっと横から手を入れただけで簡単に全てが手の中に堕ちてくるなんて堪らない。つつましくて大胆で…最高だ!」


小さな口付けを繰り返して、光沢のある夜具の上へとゆっくり押し倒される。
浴衣地の上からも感じる程、すでにお互いの身体は熱く昂ぶっていた。
グズグズと着崩れる襟元にユキの壮絶な色気が零れ、強く抱きしめるアルベルトをさらに唸らせた。

「ユキ、凄く素敵だ。君の全てを知っていると思っていたのに、浴衣に包まれた君の身体は、エキゾチックで謎めいていて…」

まるで初めての夜みたいにドキドキしてる…


あの、夢中で抱き合った夜のことが、昨日のことのように胸に蘇る。
それからさまざまなことを乗り越え、全てを知ってもアルベルトは私を求めてくれた。
そして今も変わらずに、いや日々にも増して求めてくれている。泉のように尽きせぬ思いで、ただ私だけを。

「…ユキ…綺麗な足だ…」

つま先から膝、腿の内側へ。
アルベルトの唇が、あの夜と同じ道筋を通って、自分の一番感じる場所へと近づく。

チュ、チュッ、ん、はぁっ…、ああ…っ…

色めいた水音と息遣いが、闇に吸い込まれるように消えてゆく。

「和室の良さは充分理解しているつもりだったけれど、今夜またさらにひとつ良さを発見したよ」

這い回る指に翻弄されつつも、ユキが細く目を開けて問うようにアルベルトを見上げた。

「ベッドと違って音がしないから、シンと静まり返った中で、君の色っぽい声だけをストレートに楽しむことが出来るし、どんなに激しいことをしても畳の上なら君を床に落とす心配はないしね」
「激しいことって、そんな…私に、どんなことを…なさるおつもりですか…」
「大丈夫、最後まで優しくするよ。今夜は大事な僕達の『もう一つの初夜』だろう?」

そう言って、また唇は愛撫に戻り、どんどんとユキを激しく翻弄していく。

頭の上からつま先まで余すことなく全身を辿る、気の遠くなるような長い戯れ。
濡れた柔らかい舌から紡ぎ出される、延々とした愛撫のラインが
いつ終わるともなく、ユキの身体を彷徨い続ける。

触れるか触れないかの僅かな感触が、繊細な腿の内側をなぞり上げると、ユキが思わずギクリと頭を上げた。


「っ、あ…あの、アルベルト…何をして…」
「…ん、見てわからない?…探してる」
「なにを?」


「君が……狂う場所」

言った直後にはもう、腰骨の上の薄い肌の上にアルベルトの指先が遊び始めている。
一番尖ったポイントから、ほんの数ミリわざとずらして触れられると、ユキが飛び跳ねるように身体をくねらせた。


「ココ…も、ココもかな?次は…こっち」
アルベルトの指がまた、別の場所を探して彷徨い始め、下着をつけていないユキの欲望は数々の愛撫にさらされて、いつのまにか浴衣の合わせの間からむっくりと首を擡げている。

「布団の上だと身体が揺れない分、真っ直ぐに伸びて余計に綺麗だ…、君の足も、胸も…そしてもう蜜を零してるココ、も」

恭しくその先端にチュ、と挨拶のキスをして、アルベルトが指で淡い茂みを撫でつけながら裏の筋をじっくりと舐め上げた。

「アル…ああっ、…ダメ、です…そこは…ああっ!」
「ん…も…(感じすぎちゃう?)」

口に含んだままのアルベルトのくぐもった声に、また強く煽られて感じてしまう自分が恥ずかしい。
ユキが悲鳴に近い声を出して、足をバタバタと子供のように夜具の上へと投げ出した。

「イヤ、…また私だけ…これ以上されたら…イっちゃう、も…苛めな…で」
「苛めてなんかない、花嫁にキスしてるだけだよ…愛してる、僕が欲しいかい?」
「ええ…欲しい…です…貴方の熱いのが…欲し…い」

ユキの声に弾かれるようにして、アルベルトの身体がビクリと震える。
その声に感じるのだと言わんばかりに、激しくその身体を翻して、ユキの身体に圧し掛かった。

「さっきお風呂で一度達しているから、とても感じやすくなっているね。お湯で温まって、後もすっかり柔らかく緩んでる。これならいつもより早く…君と一つになってもかまわないかな?」


言いながら長い指でぬくぬくと抜き差しをされ、いつのまにか後孔もすっかり蕩けてしまっていた。

早い…もう、こんなになってるなんて。
自分の零した先走りの露が滴って、欲望を濡らし、後までもうグショグショだ。
アルベルトとの愛の日々ですっかり作り変えられてしまった秘所がヒクヒクと収縮し、悦んで勝手に彼を迎え入れようとする。

準備が整ったと判断したアルベルトが、ユキの両足を子供のように抱え上げ、大きく前後に揺らしながら、ゆっくりとユキの中へと身体を進めた。


「はぁぅ…ああ、…ふう…っ」

じっとしているだけでも感じる、圧倒的な充溢。
眩暈のするような官能に、思わず唇かから長い長いため息が漏れた。

「ふうっ…ユキ、全部入ったよ…布団に描かれている牡丹の花の赤い色に、君の白い肌が映えてとっても素敵だ…それから、これも」

と、続けて言うアルベルトの指が、おもむろにユキの胸元へと延ばされる。

「…指輪、ですか?」
「ああ、お風呂に入っている時から、胸に掛けたこのリングが光に反射してキラキラと輝いてるんだ。シルバーとブルーサファイアのラインが交互に見えて、指にしているときの何倍も美しい」

あ…

アルベルトが胸まである長いチェーンを利用して指先で指輪を転がし、ユキのささやかな左右の乳輪の淵を順番に辿ってはクルクルと遊ぶ。
外気に触れたプラチナの冷んやりとした感触と、指とは違う堅くて滑らかな質感。

ユルユルといつまでも、肝心なところをわざと外す戯れに、ユキが胸を反り返らせて喘いだ。

「アル……大事な指輪を、こんなことに使うなんて……っ!」
「フフ、いろんな場面で君に喜んで貰えて、指輪も嬉しいんじゃないかな。マリにはもちろん秘密だけれどね」


そうウィンクすると、アルベルトがユキの乳首に指輪を引っ掛けて、左右に小刻みに何度も弾いた。
乳首に触れる内側のサファイアのラインが視覚的にも官能的で、さらにそのザラザラとした粒の感触が、すっかり敏感になってしまった赤い尖りの感度をさらに研ぎ澄ましてゆく。

「こうやって君を、ほんの少しだけ感じさせるのは、僕にとっては、とても贅沢なことなんだ…イかせないように、でも少しでも長く、君を夢中にさせたいからね」

そういって奥の昂ぶりはそのままに、言葉通り、微かな乳首への刺激だけでユルユルと、とろ火で炙られるようにして攻められ続ける。

終わりの無い快楽は苦しみと同じだと言うけれど。
いつ終わるとも知れない甘い苦しみはあまりに辛く、ユキは身を捩って何度も声を堪えるために唇を噛んだ。

「ユキ、そんなに強く噛んだらダメだよ…我慢しないで、声を出せばいい」
「だって、貴方が、ああっ、そんなに胸…ばかりするから」
「指輪でほら、こうして軽く弾いただけで…奥がキュって、締まる…ユキ、ほら、ああ今度はわざと締めたね、それで僕を攻めてるつもりかい?」
「…んンっ、アル…そん…な、違っ…」
「何?違わないだろう、君だって僕をこんなに…たまらなく興奮させてる」
「ああ、んっ、もう、イかせて…おねが…もっと…ちょうだい…」
「感じてる時だけ言葉が急に幼くなって、可愛い声で僕を誘う…悪い子だ」


あっ、あっ、あっ、…あ…


短い叫びを何度も放って夜具の上へと沈む身体を、アルベルトの強い腕がぎゅうっ、と抱きしめてそれを阻む。
一気に抽送を早めたアルベルトが、腰を大きくグラインドさせ、何度もある一点に狙いを澄まして激しくその身を穿ち、ユキの最奥へと大量の精を送り込んだ。


「ああーーっ、……あ……はぁっ…」

何…この感じ。

腰の辺りがいつまでも疼く。
いつもと違うリズムの、こんな尾を引くような快感が長く続くなんて初めてだ。
男性でも出さずにイクことがあると、知識では知っていたけれど…これがそういうこと?

喘ぐ胸を押さえて戸惑っているユキに、やはり荒い呼吸のアルベルトが小さく微笑んで種明かしをする。

「ユキ、今初めて、出さないでイったのがわかるかい?」
「まさか…」
「今夜は君が永遠に僕だけのものになった記念の夜だからね、どうしても君に、僕だけでイって欲しかったんだ、もちろんイク前にはペニスにも触れていない」

もうそれ以上は…と言いかけた唇を塞がれて、抗議の言葉は言えなかったけれど。
まだ納まらぬ激情のままに繰り返される口づけに、アルベルトの溢れる愛を感じてユキの胸に温かい幸せが込み上げる。

それがアルベルトの望みなら、どんなことでもしたいと思う。
これからも、ずっと永遠に。


「あ、アルベルト…また、何を…」

まだ荒い息も整わないうちに、アルベルトが自身を引き抜いた中へ、入れ替えるように指を挿入し、緩やかに前立腺のマッサージを開始する。

「ここが、君のイイところだね…イってすぐで辛いだろうけど、試してみたい」
「ああ…ダメっ…、また、またイクっ、すぐイッちゃう…はぁっ、はあ…ああっ!」
「イっていいよ、何度でも…君を愛したい」



数え切れない程の波に襲われて、立て続けに何度も絶頂を向かえたユキが、最後の悲鳴をあげた後、絶入るようにぐったりと布団の上に倒れ込んだ。



「ユキ、とっても可愛くて…素敵だった。でも君にとっては、ちょっと辛かったかな」

気遣うアルベルトの手が、優しく髪を撫でてくる。


「私は今まで…貴方とのセックスが辛いと思ったことは一度もありません」
「…ユキ…」


…そして、歓びの涙を流さなかったことも、一度も…


最後の言葉を心の中でつぶやいて、ユキがくったりとアルベルトの胸に身を沈めた。




◇ ◆ ◇





「くれぐれも身体には気をつけて、今度の休みは必ずユキをシチリアに連れていらっしゃい、約束よ」
「ああきっと連れて行く。マンマこそ、もう無理は出来ないんだから、風邪をひいたりしちゃダメだよ」

光溢れるファーストクラスの専用ラウンジ。
短い日本滞在を終え、シチリアへ帰るマリアのために、アルベルトと秘書の加賀美が見送りの輪を作って歓談している。
そこへランチの営業を終え店を抜けて来たユキが、時間ギリギリになって走って現れた。

「ハァ、ハァ…良かった、マンマの出発に間に合わなかったらどうしようかとタクシーの中で焦りました」
「まぁユキ、無理して駆けつけてくれたのね、ありがとう」
「大変だったねユキ、でも僕はなんだか得した気分だ。いつもは冷静な君が、必死に走っているところを初めて見たよ!」

大げさなアルベルトの声に全員の笑い声がはじける。
少しして、一歩下がっていた加賀美が遠慮がちに会話に加わってきた。

「ええ、私も静かで落ち着いた方、と言うイメージしかありませんでしたので、ちょっと驚きました。東城さんのそんな所もまたアルベルトを夢中にさせているのかもしれませんね、そんな貴方を見ることができて、私もとても嬉しいです」
「そんな…私はそれほどいつも冷静な訳ではありません、店のバックヤードで段ボールに躓いてしまったり、失敗ばかりで仲間によく笑われるくらいですから…」

単にビジネスパートナーと言うだけでなく、アルベルトと加賀美の間には、何か温かいものが流れているような感じがしていたけれど。
先日の谷地との来訪から、自分にもそれが何なのかが、少しずつわかって来たように思う。

静かで穏やかな…でも、それは確かに一つの愛だ。
愛した者と、それを受け止め見守った者。
2つの思いは交わることは無かったのかもしれないけれど、確かに温かな絆となって今も二人を揺ぎ無く繋いでいる。

「マンマ、アルベルトにとっても私にとっても、加賀美さんはかけがえの無い大切な方です。いつかシチリアへも一緒に伺ってよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんよ!貴方の大切な誰かとご一緒に、是非、シチリアへ来てちょうだい」
「ありがとうございます。でも、あの…それではあと一人、とんでもなく野蛮な大男が世界のどこから飛んでくるか解りませんが、どうぞよろしくお願いいたします」

おどけたように頭を下げる加賀美に、また大きな笑い声が起こる。


…アリタリア航空…472便にご搭乗のお客様は…

低く流れるアナウンスに案内板を見上げると、すでにもう別れの時が迫っていた。


「マンマ…」
「ユキ、『あのこと』は、どうか私がそこへ行くまで、貴方の胸の中だけに仕舞っておいてくれるかしら?」
「ええ、もちろんです。私のようなものに託してくださって。心から…ありがとうございます」

抱きしめ合う二人に、アルベルトが慌てて間に入る。

「ユキ、そこへ行くってどこへ?マンマ、まさかシチリアへ帰るんじゃないのかい!」
「アル、私達だけの内緒話に入ってくるなんて、無粋なことはしないで頂戴。ちゃんとシチリアへ帰って、貴方達が来るのを待っているわ、それじゃもう行くわね。愛してる…チャオ、アルベルト、ユキ、Mr.加賀美も…」



いつの日か、彼女が天国に召されたその後で、アルベルトに話すときが来るだろう。
幼い頃からマフィアの子として辛い目にあってきた彼が、母親から敢えて聞くことを避けてきた父親のこと。


遠い昔、真昼のパレルモ広場で起きた惨劇のあと、駆け寄ったマリアの腕の中で彼が首からクロスを毟り取り、最期に言った言葉。

「これを…君に…そして、もしも君に新しい命が宿っていたなら、その子に渡してくれるかい……愛してる、マリア…」


名誉の傷は血で洗う、誇り高きシチリアンマフィアとしての壮絶な彼の最期。
そしてマリアがその時叫んだ、魂のあるべき場所。

愛する人の、その名前を。



…アルベルト…





Fin.
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by apacheoffice | 2009-03-08 16:07 | The Place To Be

作文だったり感想だったり。大人の女性のみどうぞ♪


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