The Place To Be (6)

こちらはボーイズラブ小説の二次創作です。関心ない方、お子様は閲覧なさらぬようご注意下さい。

YEBISUセレブリティーズ アルベルト×ユキの6回目。
ただお食事して話してるだけで、どんだけ引っ張ってんだ。<笑
某宝石デザイナーさん、回想チラ出演にも関わらずキャラ了解ありがとうございました。
なんかお遊びっぽいことやりたかったんだな。
では、長いのでお暇な方のみこちらからどうぞ。
    ↓




 




「ホテルの中で一軒の家をそのまま使うなんて、これはヨーロッパにはないスタイルね。大きな温泉もプライベートだし、ディナーまでわざわざ運んでくるなんてありえないわ!」

中庭での心温まる小さなパーティーが終わり、離れに戻って一休みしていると
仲居が襖の向こうから声を掛けて来て、広い座敷に次々と豪華な懐石料理の数々が運び込まれる。
みるみるうちに美しく並べられていくその様子さえ、客を楽しませる一種のパフォーマンスのようだった。

従業員達の着物姿も珍しいのだろう、一緒に写真を撮ったり一つ一つの料理の説明を聞いたりと、マリアは何かと忙しい様子だ。
アルベルトはそんな母親の通訳に徹しつつ、ニコニコと始終上機嫌でいろいろと世話を焼いている。

「これは塩釜と言って、鯛の周りを塩と卵白を練ったもので固めてオーブンでじっくりと火を通したものだよ、この木槌で割って中身を取り出してくれるんだそうだ」
「魚の滋味と塩味だけのシンプルなお料理ですし、マンマのお口に合うのではないでしょうか」
「ええ、これは美味しいわ。オリーブオイルを垂らして、松の実とフレッシュなバジルを散らしたら、まるでシチリアの漁師料理ね!」

料理が出てくるたびに歓声をあげ、マリアは周りを和ませつつ自分も楽しんでいるのがわかる。
食事が進むうちにすっかり日も暮れて、いつの間にかテラスに続く露天風呂の灯りが、闇の中へと美しい縞模様を映し出していた。


いよいよ最後にデザートの水菓子と日本茶が供されるあたりを見計らい
板長が「ご挨拶を」と静かに座敷の襖を開けた。

「本日は当ホテルの季節の懐石コースをお召し上がり頂きまして、誠にありがとうございました。お味の方はいかがでしたでしょうか?」
「どれも趣向を凝らした素晴らしい料理とサーヴィスだったよ。家族も充分に満足したようだ。ありがとう、これはほんのお礼の気持ちだよ」

アルベルトが胸ポケットから出した小さな祝儀袋を、恐縮する料理人へとさりげなく手渡す。

その仕草の優雅さ。
人としての大きさ、温かさが滲み出る様子に、思わずユキがアルベルトを眩しげに見あげ、襖が閉まるのを待ちきれない、といった様子で話しかける。

「アルベルト!あの、貴方がまさかそんなものまでご用意なさっていらしたとは、全然気がつきませんでした…」
「ああ、さっきの祝儀袋?あれは加賀美が用意してくれたものだよ。日本では伝票に追加でサインと言うわけには行かないからね」
「本当なら貴方のプライベートのことはすべて私が用意して差し上げなくてはならないのに、すっかり加賀美さんにお手数をおかけして…」

ひょっとしたら自分よりもずっと、彼のことを理解しているのではあるまいか、とさえ思う。

切れ者の秘書と言うだけでなく、実は熱い尊敬と深い親愛の情を上司に寄せている加賀美の細やかな気遣いに、心からの感謝をしているはずが。なぜかユキの胸はチクリと痛んだ。

「いや、今回の旅はアレンジからすべて加賀美にして貰ったんだから、君は何も考えずに楽しんでくれればそれでいいんだ。母と君との思い出となる大事な旅にしたいと思って、わざと何の相談もしなかったんだからね」
「そうよユキ、ハネムーンぐらいは遠慮なくこの子に甘えてあげて頂戴。さて邪魔者はそろそろ失礼するわ。これからエステの予約もしてあるし」とマリアが二人の会話に入る。
「そんな…マンマもここで、もっとゆっくりなさって、アルベルトも一緒に…あのっ!」

助けを求めてアルベルトを見ても、上手に片眉を上げてみせるばかりだ。
マリアもおどけたしぐさで頬を撫でて笑っている。

「支配人に聞いたけれど、ここのスパは何百年も前から美肌に良いので有名だそうね、日本人の肌の美しさを盗んで帰らなくちゃ。それから明日は私を起こさないで。お互いに、ゆっくりしましょう」
「おやすみマンマ、スタッフの女性にも良く頼んであるけれど、くれぐれもバスで脚を滑らせないように気をつけて」
「わかったわ、アルベルト。ユキも、ほらキスをして…おやすみなさい、良い夜を!」

軽いハグと陽気な歌声。
彼女が自室へ引き上げると、辺りにようやく静寂が訪れた。

山間の宿の離れには、もはや巣に帰る夜鳥の鳴き声と、露天風呂から流れる静かな水音しか聞こえない。


二人で庭を眺めるソファーに座って。
アルベルトがユキへとわざと一瞬、トン、と身体を預けた。

「静かだ…ね」
「…はい…でも、お湯の、流れる音がします」
「ああ、とても気分がイイ。夏の終わりの風が吹いて…こういうのを風情、と言うんだろう?」

小さな自然の音にさえも趣を感じる日本人の感性を、アルベルトはここ数年でさらにまた理解を深め、自分のものとして感じるようになったと思う。
もともと自然から物を作り出すクリエイティブな世界の人間なのだから、当然といえば当然のことなのだが。

「ユキ、疲れてはいないかい?」
「いいえ、突然のことでしたので、まだ少しパーティーの緊張と興奮が残っているとは思いますが」
「ゴメン、サプライズで君をいつも驚かせる、僕は悪い男だ…、いや、ただの男じゃなくて…君だけの、も付くけどね」

器用に片目をつぶって見せる。そんな彼の仕草に逢うたび、自然なハグやキスで上手く応えられるようになりたいといつも思うのだけれど。
実際にはまだ恥ずかしさが勝ってしまって、とてもそんなことは出来ない。
彼の大きな手に、自分のそれをそっと重ねるのが精一杯だ。

「食事も本当に美味しかった。僕は日本酒じゃなくて、ワインがこんなに懐石に合うとは 知らなかったよ」
「ええ、とても勉強になりました。それにマンマも食べ物の好き嫌いがないし、日本食にも抵抗なく箸をつけてくださって」

本当に嬉しく思う…

マリアもアルベルトも基本的に好奇心の強い人種なのかも知れないと。
似たもの同士の母と子の顔を、同時に思い浮かべてユキが笑った。

「京都でLABOの本社役員を接待することは良くあるけれど、そんな時は大概スケジュールも厳しくて、自分だけは新幹線でトンボ帰りのことが多いんだ。こんな風に泊まりでゆっくりと懐石料理を堪能するのは、もしかしたら初めてのことかもしれない」

「そうだったんですか…大の日本通として経済誌にも紹介記事が載るほど有名でいらっしゃるし、旅もあちこちなさっているものだとばかり思っておりましたが」

「いや、案外そうでもないんだ、懐石というものは自然を愛する茶の湯の精神が生きている、もっとも日本らしいもてなしの手法だね」
「はい、アジアの中でも日本は特別なホスピタリティーを持っていると思います。求めなくても差し出される、でも決して邪魔にならないというおもてなしは、LOTUSでの接客にも取り入れて、私達も日々研究しているものですので」

「ああ、それは見ていてとても良くわかるよ、僕も初めて君に惹かれたのはそんな小さなサービスの瞬間だったんだから…」



小さなサービス?

と首を傾げるユキの顔を覗き込んで、アルベルトが大事な秘密を教えるようにひっそりとささやく。

「そう、僕が初めてLOTUSに入って、テラス席に座ったとき、君は僕がメニューを見やすいように、わざと太陽を遮る位置に立って待っていてくれただろう?」

確かに、初夏の陽射しは気持ちが良くても、メニューを見るには少々眩しいことが多い。水をお出しした後に少し移動して、お客様に日陰を作って差し上げることも確かにあるけれど…

「そのようなことまで…気づかれるお客様などほとんどいらっしゃらないと思いますが」
「驚いて見上げた僕の前に、後光を纏った美しいミューズが立っていたんだ。あの時、僕は何を注文したのかも忘れて、去っていく真っ直ぐな君の背中を見つめていたよ」

そして、その瞬間に「運命の恋」に堕ちてしまったんだ、と。

アルベルトの思いがけない告白に、じっと座っていられないくらい心が揺れ始める。

まさか、初めての日に、貴方はそんなことを思っていただなんて…

「でも君はそれからずっと2年半もの間、ミューズじゃなくて冷たいアイスドールだったけれどね」
「それはお願いですから、もう言わない…で」
「いいんだ、それに僕は今日の日が来ることを全く疑っていなかったよ、いつも君にお礼を言っていたくらいだろう?」
「お礼、ですか?」

確かに、どんなに冷たくあしらった日でも。
店を出る瞬間には、明るい太陽のような笑顔で「ユキ、また来るよ。ありがとう…」と言って貴方は去って行ったけれど。

「知らなかった?あれはいつか必ず君が指輪を受け取ってくれることに、僕と一緒に暮らしてくれることに、そして何よりいつの日か、僕を愛してくれることに対しての…感謝の言葉だったんだ」

アルベルトが揺ぎ無い心で信じ続けてくれた「二人の未来」
それが今、ここにあるのだと、アルベルトの指が左の薬指を示す。

「アルベルト…あんな仕打ちをした私を諦めずに愛してくださって、本当にありがとうございます。そして今日はこんな美しいものまで頂いて。私には、幸せすぎてまだ信じられません」

そっと絡めたままの彼の指にも、自分と同じ美しいリングが輝いている。

幸せのための、もう一つの何か。
「something blue」の秘密を思い出して、ユキが小さく微笑んだ。

指輪の内側に、隠し細工で埋め込まれた小さなサファイアのライン。
これが最後の幸せを象徴する「ブルー」であることを、つい先ほど、式の最中に、彼が指にはめながら教えてくれたのだ。

掌に載せては眺め、何度も感嘆のため息をつく姿に、アルベルトがクスクスと笑う。

「ユキ、そんなに何度も外して見るくらい気に入った?」
「はい、外側のデザインも素敵ですけれど、内側のブルーサファイアが特に、美しい…」
「それは良かった、デザインは日本人で僕の古くからの友人でもあるJewel・マリのものだよ。まだ10代の頃、イタリアの下町の工場が立ち並ぶ地区で、僕たちは一緒に修行していたんだ」
「そんなに古くからのお友達なんですか…」
「うん、僕が小さな家具工房で働いていたのは知ってるね?同じ頃、彼女は宝石職人の元に弟子入りしていた。当時は皆お金がなくて、よく若い職人仲間で集まっては朝まで安ワインを回し飲みして夢を語ったものだよ」

いつもは大人の魅力を溢れんばかりに振りまいているアルベルトにも「ポケットの中のコインと夢だけで生きていた」そんな青春の日があったのだ。
自分には望むことすら出来なかった、永遠に輝く美しい日々。
恋人の口から語られる、小さなエピソードさえ素直に羨ましく思う。

「彼女も今では世界のトップジュエリー・デザイナーとして成功を納め、毎年のパリコレでもあちこちのメゾンに引っ張りだこだけれどね。僕も陣中見舞いに行くたびに、押しかけた世界中のメディアに感想を求められてよく往生するんだ。そういえば、この前のオスカーのレッドカーペットでもスターの胸元を彼女の宝石が飾っていたという話だよ」

パリコレ…メゾン、オスカーのレッドカーペット…

恋人が自分とは違う世界の住人であることを、いつもはそんなに意識はせずに暮らしているけれど。
こういう話が当たり前のように語られるたびに、そのあまりに遠い世界に軽いめまいを起こしそうになる。

彼もまた、自分には想像も付かない、フラッシュの洪水の向こう側にいる人間なのだ。

「ユキ?どうしたの?もしかして、彼女と僕に何かあったと思ってる?」


女性の話をしたことで、誤解されたと勘違いしたのだろうか。
俯いた瞳に驚いたアルベルトが、慌てて肩を抱いてくる。
温かな彼の体温が、何も心配ないことを言葉より先に身体で教えてくれているようだった。

「彼女とは昔から友達以上の関係は何もない。それに彼女の恋人は、韓国のグループ企業の御曹司で、今は映画監督としても活躍しているんだそうだ。来年の結婚式にはもちろん君も是非出席して欲しいと、幸せそうに話していたよ」
「そうなんですか、それはおめでとうございます!私も、是非出席させて頂きます」
「じゃあすぐに返事をしておくよ。君が指輪を気に入ったことも報告しなくてはならないしね。ほら、これを見てごらん」

アルベルトが手にしたのは、指輪のケース。
ここから出して、さっきお互いの指に嵌めてから、まだ一度も仕舞ってはいなかったけれど。
あらためて眺めてみると、高級革に金の模様が細工されたJewel・マリのケースははとても美しく、そのまま飾る宝石箱としても使用できる凝った装飾が施されていた。

「ほら、彼女はちゃんと君のことをここまで考えてくれている」

アルベルトの指が、箱の中からキラキラと光る極々細いチェーンを注意深く摘み上げた。

「これは…あの、ネックレス、でしょうか?」
「君がカフェとレストランの営業を取り仕切っていると話したら、仕事中は指輪が出来ないこともあるだろうからと、ちゃんとチェーンまでデザインしてくれたよ」

世界的なデザイナーの繊細さは、こんな所にも発揮されるのだろうか。
男性のネックレスにしてはそれはかなり長めで、細いプラチナのチェーンであることがわかる。

「プライベートでは指に嵌めて、仕事の時はこうしてチェーンに通して胸の中に仕舞えばいい」
「はい、これなら、夏の白いシャツにもあまり響かずに付けられると思います」
「ああ、たとえシャツのボタンを1、2個は外しても中のリングが見えることはないだろう」

僕としては、たとえ夏でも君には胸のボタンを外して欲しくないんだけれどね…と、ジョークとも本気ともつかない顔で話しを続けながら
そっと抱いている肩を外して、アルベルトがネックレスを着けてくれた。

その手がそのまま背中を下り、腰の辺りをグッと引き寄せてくる。


「ねぇユキ、せっかくのプライベートな温泉に来たのに、早く楽しまないのはもったいないと思わないかい?」

「え…」

ほとんど唇を耳に押し充てたまま。
ストレートな誘惑が、熱い吐息と一緒に吹き込まれた。

「これから、あそこに…一緒に入ろう」


続く
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by apacheoffice | 2009-02-20 00:07 | The Place To Be

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